老僧自身もが信じられないほどの激しい動きであった。ともすれば、この娘から若さや力を注ぎ込まられているのでは無いかと思えるほど。しかし、それは紫乃も同時に感じていた。子宮から流れ込んで来る気のようなものが全身に行き渡り、信じられないほど体が熱くなる。全ての神経が研ぎ澄まされ、今なら頭を撫でられただけで気をやってしまいそうである。
「あっ、んっ、逝っ……ちゃう」
「かぁっ!……ふっ!」
熱い精汁が放たれ子宮がたぎる瞬間、紫乃は意識を失ってしまいそうなほどに昇りつめた。止めどなく出される白濁は紫乃の膣を満たし、滲んだ血と混ざり合って遂には外へと溢れ出す。しかし腰の動きは止まらず、射精もまた止まらず。
足が引っ掛かったのだろうか、不意に燭台が倒れ辺りは一瞬薄暗くなった。目をこらして老僧を見れば、白眼を剥き口を開けたまま。なんと、魂が抜けているではないか。紫乃と共に極楽図へと達し、そのまま還らず逝ってしまったのだ。死して尚、腰を振り精汁を出し続ける。子種を残そうとする。
チーーン
他に誰も居ないはずの薄闇の底でリンの音が響き、同時に老僧の動きが止まった。否、止まったのは老僧ではなく紫乃。動いていたのは彼女の腰の方であった。
辺りが明るくなる。倒れた燭台の灯が法衣に燃え移ったのだ。仰向け様に骸(むくろ)が倒れるのに合わせ、紫乃の上半身が起き上がる。辺りを紅蓮の炎が包み始める。なお依然として勃起したままの性器。紫乃は骸に跨がる形で再び腰を上下させた。その目からは留めどもなく涙が流れ落ち、よもや動かなくなってしまった胸板を濡らす。
「う……ひくっ……はぁっ、ん」
泣きながら喘ぎ、吐息をついては鼻を啜る。まるで後を追わんが如く、何度も何度も逝き続ける。やがて骸の顔は穏やかなものへと移りゆき、なんとも満足げな死に顔。往生だったに違いない。火炎の中で、静かに木彫観音像が見守り続けていた。
本堂の引き戸を開ければ紅い月。月光を浴びて浮かび上がる紫乃の裸体は、紅潮しているのか月の色を映しているのか桜色。その顔は表情を失くしながらも涙だけが流れ続け、腿の内側を泡立つ汁が伝う。背後では炎が建物へと本格的に燃え移り、夜空を焦がし始めていた。
※つづく