ティアは倫子の両親にとって邪魔でしかなかった。
しかし娘の倫子はこうして自分の目の前で笑いかけてくれる。
なんとも奇妙だとティアは思った。
「倫子、おばさんに悪いから今日はもう休ませてもらうね。楽しかった」
「そんな、ティアちゃん……。…分かった、おやすみなさい」
「おやすみ」
彼女の口惜しそうな目が、ティアをなんとも言えない気持ちにさせた。
明日から同じ高校に通うことになるのだからと、ティアは心の中で言い聞かせた。
倫子を可哀想に思いながら、彼女の両親にも気を遣わなければならなかった。
(……………やってけるのかな)
そしてもう一つ、彼女には懸念材料があった。
この家に来ると決まってから、ずっと恐怖していた事柄が。
翌朝は雨だった。
倫子を先に行かせた父親の狂気じみた瞳が、ティア捕らえた。
ティアも分かっていた。
間違いなく、倫子の父親が自分に説明していた「あの事柄」だ。
倫子の母親もひきつった笑顔を見せていた。
「さて、この家に来たことだし、そろそろ…いいかな?」
ティアは逃げ出す気は無かった。
逃げ出す当ても、資金も、ましてや知らない街に知り合いなど、いるはずもなかった。
「はい…」
「では…読み上げてくれないかな」
パソコンで印字された内容に、朝食を戻しそうになりながら、ティアは読み始めた。
「…ぅ…わたくし…上崎(カミサキ)ティアは、杉屋(スギヤ)家のために、肉体的精神的にその奴隷となり、毎朝…杉屋家のご主人様の……ペ……ニ…スを…しゃぶり、ご主人様が…射…精されるまで…これを……やめません…」