「おい…!」
「見…見ないで…!」
「もっとよく見せろ…!!」
「ダ、ダメ…!っや…!!そこは…!」
恭太は冷蔵庫の冷凍室に手をかけ、開いた。
他同様、一切食料品や飲み物、冷凍食品等は見当たらなかった。
「先生……。心配無用どころか、嘘つきましたね?」
「いえ、きちんと食事は…」
雪美の部屋は想像を遥かに越えた状態だった。
高級感溢れる玄関の扉の先には、
中年の独身男性のだらしない六畳一間を、思わせる光景が広がっていた。
カップ麺や缶ビールのゴミが散らかり、
洋服類は脱ぎっぱなし。
どうやら新聞紙を片付けるのが面倒になった果てに、新聞紙の上で寝ているらしかった。
ベッドには、綺麗なマットレスだけがぽつんと乗っかっていた。
「食事ってのは、インスタント食品の事ですね?」
「い、いえ!昨日は…出前をとりました…!ひ、久しぶりに…お蕎麦を食べたくなりまして…」
「野菜とか肉とか、あと果物とかは?」
「それは………」
恭太は憂いた。
雪美のプロポーションの秘訣を聞いた女子生徒が、この部屋を見て、先生の食事内容を聞いたら、どう思うか…。
「先生、カッコつけとか無しで言います。
ずっと俺の女でいて下さい。
いいですね?」
とてもこの容姿・性格からは想像できない、堕落っぷり。
これが知れれば、冷徹な女の噂より、ダメ女の噂が広まってしまう。
恭太は部屋を片付けながら、おどおどとあとに続く雪美を見て、殊更愛しく思った。
「守岩恭太…。何故、こんなに私を気にかけてくれる?」
「好きだからってのが一番でしたけど、放っとくと危険ってのが一番になった気がします…」
「好きだから……」
「先生…、俺は、先生のことちゃんと見続けますから。安心して下さい」
寝言のことを言われたのだと、雪美は思った。
雪美は頬を紅く染め、こくん、と頷いた。