「………」
「………」
起きたのはほぼ同時らしかった。
雪美の大きな瞳に、恭太は自らの顔を映した。
二人はマットレスの上に、掛け布団やシーツを駆使して、簡単なベッドをこしらえて眠っていた。
お互いに、あれだけの事が起きた翌日なので、改まると緊張を隠しきれなかった。
「お、はよう……」
「おはよう…ございます……」
お互い起きようと上体を起こすと、
脚同士は複雑に絡み合っていた。
すぐに離れたが、気まずさが残った。
雪美はコーヒーの準備を始め、
恭太はトーストと、簡単な朝食を作った。
二人は無言でそれを口に運びながら、
昨日、眠りにおちる寸前までに起きた出来事を反芻していた。
(……………)
(……………)
雪美は思い出せば思い出すほど恥ずかしくなり、しかし最後には恭太の一言に救われ、自らの気持ちを吐露できたのだ。
恭太は、少し彼女を強引に扱い過ぎたと反省していたが、時おり彼女はこちらをじっと見つめてくれるので、不快には思われなかったのだろうと安堵した。
「お口に合いましたか、先生?」
「はい。美味しかったです、とても」
「良かったです」
(……………)
(……………)
「あの…先生?」
「は、はいっ」
黒髪を揺らし、驚いた様に雪美は返事をした。
「今日は、土曜日で…先生もお休みで良いんですよね?」
「はい、特に校務はありません」
「じゃあ、どこか行きませんか?」
「どこか……」
「あ、いや、勿論、先生の都合が…」
「行きましょう。どこか」
雪美は当然の様に返事をした。
「私……海に行きたいと思っていました」
「良いですね、海!」
雪美は急に顔を赤らめ、言った。
「み、水着とか、……着なければなりませんか?」
恭太は心底見たかったが、彼女を強引にはできないと反省した直後だけに、なんとも言い出せなかった。
「お、おまかせします…先生に」
雪美は意外な返答に驚いたが、すぐに水着があるのだろう部屋に入って、何かをバタバタと準備していた。