準備をし、雪美の運転する車で海に向かう間も、二人は互いに距離感を近づけれずにいた。
「先生、のど渇きません?」
「私は大丈夫です。きょ…恭太は?」
名前を言うだけでどもってしまう。
恭太も起きてからまだ一度も雪美の名前を口にしていなかった。
なんとも不思議な距離感を、二人は埋めれずにいた。
先生と生徒を越えた関係を続ける。
そう決意しても、まだ二人には何かが邪魔をしていた。
体裁を無意識に繕うためなのか、
急激な関係の変化からの違和感なのか、
しかし、二人にはただ確かなことが分かっていた。
「わぁ…」
「着きましたね」
海岸近くにある駐車場に車を停めると、
雪美は恭太を先に行かせた。
「パラソル…この辺りでいいかな。しっかし空いてるなぁ…」
夏休みとは思えないまばらな人の数に、
恭太は目を丸くしていた。
「先生どうしたんだ………せ、先生…!」
「ち、違っ、これしかなくて……恭太…きっと……喜ぶかな…って…」
背中が腰辺りまでばっくり開き、胸元とくびれ部分も肌が露出した、大胆な黒い水着姿で、雪美は現れた。
「本当は、い、以前に、雅次さんに見せようと買って……結局、着なかったものです…」
以前に、ということらしく、確かに現在の彼女の肉体は、少し締め付けられている感じがあった。
「そ、そこまで大胆なものを持ってらっしゃるとは…」
「やっぱり…あ…あんまり…見ないで…下さい……」
雪美は恥ずかしくなり、膝を抱えてパラソルの下うずくまるが、水着の露出面積の関係上、裸に見えてしまう。
恭太はそちらの方が余計露出している気がすると思い、誰かに見られる前に、彼女を海に連れ出すことにした。
「?は、恥ずかしい…です…」
「ま、まぁまぁ、先生」
少し沖の方に出ると、辺りに人はいなくなり、二人だけがぽつんと浮かんでいた。
「あの…先生………」
「!!ひっ、あっ、はぁ…う!」
「!?先生!?」