放課後、二人はクラスの図書委員を任されているため、委員の活動で図書室に来ていた。
「はぁ〜。なんでこう本がバラバラになってんだか…」
「夏休みに図書室の整理もしたのにね…。こんなにバラバラになってるなんてちょっとショックだなぁ〜」
「あ、優、それはこっちの棚…。
…あ、それはこっちの……。
え…あ、違う…ちょっと!!アンタの入れる本と私の入れる本の棚、位置違うから!!
なんでこんな狭い空間の本棚の位置間違えるかな…。アンタはあっちの棚だっての!
………ああ〜、いちいち泣くな泣くな、強く言い過ぎたって…」
「だって……沙耶ちゃんが……うぅ…」
いつもこんな調子の優を、沙耶が放っておけるはずも無かった。
だからこそ、職員室へ向かう途中言われた一言が余計、沙耶の心には引っ掛かっていた。
「優…」
「ん〜、なあに〜」
「アンタさ、その……。好きな男子とかいないの?」
「いない、いない〜」
沙耶は毎回、当然のように答える優に、少なからず胸を痛めていた。
優の"事情"を知っているから。
「私には沙耶ちゃんが居ればいいもん」
「ったく…」
「こっちは終わり〜」
「早ッ…!アンタ言われたことやるのは早いんだよね」
「へへ〜」
褒められて得意になっている優を無視して、沙耶は自分の持ち場の整理を続けていた。
沙耶が踏み台から足を下ろした時、不意に、優が後ろから抱きついてきた。
「…っと!!マジに危ないっ…て…………?優?」
優は後ろから抱きついたまま、沙耶の背中で泣いていた。
「優…?今日は特にヘンだぞ…。どーした?」
「今日は特に…って……。いつもヘンみたいじゃん……」
「いつもヘンでしょ?」
「……………私…男のひとはやっぱり好きになれないよ……」