「ね……優…。優には、幸せになって欲しい。これは本当だから…」
「沙耶…ちゃん…なんで、なんで今まで言ってくれなかったの…!私…ただ沙耶ちゃんに甘えてただけだった…なんにも知らないで…!」
「ばか…私に甘えてくれるアンタが…そういうアンタが大好きなんだよ」
沙耶の涙を、優は初めて見た。
「なん…で…。なんで、沙耶ちゃんがそんな目に遭わなきゃいけなかったの…!!」
「優…そんなこと言ったらアンタの事はどーなる。私は……ただ運が悪かった…ただそれだけ」
沙耶は逃げるように、小学校卒業と同時に引っ越し、現在は親元からも離れている。
沙耶は、男を嫌悪しただけでなく、そんなことが起きた自分の生まれ故郷をも、嫌悪し、捨てたのだ。
「……運が悪かったおかげで…アンタに出逢えた…。そうだよ。私、もしかして運が良かったのかも…」
「沙耶ちゃんのばかぁ…!!」
「優は泣き虫だなぁ〜…」
優の額にキスをし、沙耶は静かに呟いた。
「優……大好き。………大好き」
沙耶は優を、ふんわりと優しく抱き締めた。
「きっとお義父さんとお母さん、仲直りするよ」
優は沙耶の声に包まれた。
沙耶の胸に、腕に、包まれた。
沙耶は、自分より辛くて壮絶な過去を持っている。
なのに…。
「沙耶ちゃんは………沙耶ちゃんには…私がずーーっと…ずーーっと…ずーーっと…ずーーっと……そばにいるからね…!!」
「はは、分かったよ。ありがとう。…………優、少し…眠ろう…」
「うん………。おやすみ、沙耶ちゃん」
「おやすみ…優」
裸のまま、少女たちは抱き合い、眠った。
傷ついた体を、庇い合うように。