沙耶は虚ろな瞳をしていた。
「沙耶ちゃん…!!学校……行こ…」
「ふふ、アンタもそんな真面目なこと言うんだね」
「ねぇ、沙耶ちゃん…!!私…本当に沙耶ちゃんのこと、大好きだよ!!だから…沙耶ちゃんが男の人に何されたって、私が絶対守るから…!!」
「だから………それじゃあダメじゃん」
「?」
「アンタには…きちんと男と付き合って欲しいって言ってんの」
突き放すような言葉と瞳に、
最早、友情の含みは無かった。
優にはただただ、沙耶からは孤独感しか伝わってこなかった。
「沙耶ちゃんが……沙耶ちゃんが一人になっちゃう……!!私…そんなの…全然嬉しくない!!!」
「アンタの…………。
アンタの意見なんか知るか…!!!」
優は沙耶に駆け寄り、
彼女の横っ面を平手打ちした。
ばちんっと、弾けた音が橋の上に響いた。
「?!…………はっ……私は…こうやって謂れの無い仕打ちを受けてりゃ良いわけですか……」
「馬鹿…!!!馬鹿…!!馬鹿!!私の…私の意見を言わせてよ…!!!」
「アンタに意見なんかあるの…!!へぇ、じゃあ聞かせなさいよ!!アンタにどんな立派な意見が………」
優は、沙耶にキスをした。
突然だったが、沙耶は少し目を見開いただけで、その後ゆっくり目を閉じた。
「だから………。私は…"沙耶ちゃんが"…好きなんだよ…!!」
「………………ゆ…う……」
「沙耶ちゃんが…私のこと男嫌いって…。確かにそうかも知れないよ。でも、私は…私にはもう、大好きな人がいるの」
「わ……私を…私を本気で好きになって……それでどうすんの…!!女同士だし…!!ワケわかんない…!!どんどん疎外されて、最後は何ッ!?心中でもするの…!?」
もう答えは出ていた。
沙耶も優も泣きながら、言葉を発していた。
疎外されて、除け者にされて、心中することになろうと。
「沙耶ちゃん…」
「優…!」
「大好き」
「………大好き…!」
二人は手を繋ぎ、学校へと歩き出した。
彼女たちの指は固く結ばれ、握りしめられていた。
END