―ああ〜、つまんね…。―
人々がごった返す街中で、
学生服を着た男は、不機嫌そうに空を見上げていた。
―ダルい試験に…
かったりィ部活に…
…ウザってェクラスの連中に…
弱ェくせに、ナメた態度とりやがる、
面倒な野郎ども……―
「…み、きみ、きみ!!」
「…ぁぁあああ!!!」
周りの叫び声やクラクションの音が耳に入ってこないほど、男は自分の世界に没頭していた。
だから、赤信号の交差点に自らが踏み出していることも、気付かなかった。
―毎日毎日……やってらん…―
その瞬間、天地がひっくり返り、男は意識が途絶えた。
「………あぁ?」
男は目を醒ますと、
見知らぬ草原に寝転がっていた。
「?…学校行く途中だってのに……。どこだ?ここァ」
「あの……」
男は飛び退くと、背後には、布切れ一枚で体を覆い隠した若い女性が、困ったような顔で立っていた。
「?姉ちゃん、かなりファンキーなカッコしてっけど…。……あぁそだ、正常学園て…こっからどう行くの?」
「………。皆島貴斗(ミナシマ タカト)さん…。あの…」
「なんで俺の名前…」
「大変申し上げにくいのですが…あなたは、死にました」
「…。あそ。わーった」
「へ?」
貴斗は目覚めた時より、晴れやかな顔で草原を歩き始めた。
若い女性も、直ぐに彼の後を追った。