「……はぁ…。や…やです……!!やめて…!!」
貴斗は、涙を浮かべて嫌がる花子に、
虚ろな目を向けた。
「…っ……はぁ…やってらんねーよ。とっとと決めさせろ」
花子は乱れた髪を直し、答えた。
「もう一度太陽が昇らなければ…できません。そういう儀式の条件なんです…」
「天界にも、雨は降るのか?」
「…ええ…降ります。ですから雨や曇りで太陽が出ない日は、儀式もできません」
貴斗は花子に向き直り、再び彼女には抗えない力でベッドに押し付けた。
「!?」
「賭けようぜ。
明後日まで太陽が出なかったら、
ヤらせろ」
「なっ…!!?」
「明日、明後日に太陽が出たら、ここに連れ込んだことをおめーの寮の奴らに謝りに行ってやるよ。
もちろん、おめーが間違って俺を殺したことは言わない約束でだ」
「…そ…そんな…!どちらにせよそんな行いをすればあなたは地獄行き確定ですよ…!?
死者が天界人を……はぁ…ぅ…ん…!
強姦するなど…!ぁあ…ひぅ…!
あっ…!
た、貴斗さん…!
天界人と死者が交わるなんて…
聞いたことありません…!!」
「うるせーな、いいから今日からここで寝泊まりしろってんだよ!」
(な…なんて理不尽な人なの…!!
人の弱味に漬け込んで…)
花子はふと考えた。
貴斗は弱味には漬け込んでいない。
むしろ、不自然にも強引に自分を連れ込んだではないか。
間違って自分を殺したことは一切言わずに、わざわざ力づくで。
花子はさらに考えた。
何故、自分が寮を嫌っていると分かったのか?
何故、天界案内人ごとき自分を連れ込んだのか?
貴斗は寝る間際、花子に、静かに言った。
「………おめー、最近鏡見てねーだろ」
貴斗が寝静まる頃、花子は気になりだし、鏡台の前に腰掛けた。
「……………」
花子の顔は、辛そうに目の下にくまを作り、虚ろな目で笑顔を作っていた。
(これが…私………)
「よ…余計なお世話ですよ…」
そう言って見た貴斗の寝顔も、辛そうに歪んでいた。
「…貴斗…さん……?」
花子は貴斗を見つめながら、
窓の外の雨音を子守唄に眠りに落ちた。