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モノクロの世界で9

翠蓮 2013-02-10投稿
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「話がある。その女を退けろ」

至って冷静に、でも怒りを込めて言い放つ。

須藤は少しキョトンとしたあと、何かを察したようにハッとし、僅かに笑みを浮かべた。



「ごめんねー、さきチャン(女の名前)。男同士の話があるからまた今度しようね」


須藤にそう言われた女は「えー」と納得いかない顔をしたが、服を着直し渋々その場をあとにした。

すれ違う瞬間、物凄い眼で睨まれたのは気のせいだろうか…。



「...で? 話ってなに?」


女の手によってドアが閉められてから、須藤が口を開いた。


俺はグッと拳を握りしめ、答えた。



「まず、殴らせてくれ」



「は?」

バキッ!!



…ミラクルヒット。

俺の固めた拳は須藤の顔面に見事ぶち込まれた。


「…っくぁ…っ…な、何すんだ急に!!」


須藤はよろめき、驚きと少しの怒りが混ざった声で聞く。
さっきまでの余裕ぶった笑みが崩れた。

俺はそんな彼に冷たく言う。


「キスのお返し」


「…キスぅ?」


何の事だか分かってない顔。ふつふつと怒りが沸き上がる。


…もういっぺん殴ってやろうか…。


「お前のバカな行動のおかげで俺は部員に引かれてんだぞ。」


「バカ」を強調して言葉を並べる。
須藤はようやく思い出したのか、「あ〜」と口を開き笑った。


そして、俺の怒りゲージを最大まで上げるには充分な一言。


「あれ、まだ根に持ってんの?めんどい性格してんな翡翠」




…カッチーン。


頭ん中で何かが弾けた。



「…根に持つも何も…
部員全員に持たれてんだよ!!俺がホモだってイメージを!それもお前のせいで!!これじゃ部活まで居づらくなるだろうが!どう責任取ってくれんだこの変態バカ野郎!!」


早口言葉みたいに喋ったせいで息が切れた。



人間嫌いな俺にとって学校は最低な場所で。
でもそんな中でも唯一安らげる時間がある。
それが昼休みと部活だけなんだ。
それさえ壊されたら、腹も立つ。



「…あは、滑舌いいなぁ翡翠。」


「…っお前…!」


これだけ文句言っても余裕たっぷりに笑う須藤に、怒りの熱は冷めるどころかもうオーバーヒート。

須藤のネクタイを手荒にひっ掴み、もう一度殴ろうと拳を振り上げる。


…が、それは須藤の大きな掌へ包み込まれた。


「…!」


須藤は、不気味な笑みを浮かべて。


「いいぜ。責任…
取ってやる。」



そう、言った。

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