―――・・・・?
気づくと、俺は仰向けで寝転がっていた。
視界にあるのは雲一つない青空だけで、現状が把握できずポカンと放心状態。
数秒程経ち、ようやく起き上がる。
辺りを見回し今いるこの場所が屋上だと理解した。
「…っ!」
同時に、自分の服装が乱れていることにも気付く。
それも変態並みに。
そして脳裏に浮かんだ須藤の悪戯な笑み。
じわじわと滲み甦る記憶は、俺の頬を熱くさせてゆく。
…そうだ。
俺は、アイツに、
…須藤に、
ヤられ…
…いや、ヤられてはいな…い、か?
ヤられかけ、…違うか。
少し遊ばれただけ…
あれ、何を言っているんだ俺は。
…とにかく。
俺は須藤に、屈辱的な行為を強いられたんだ。
改めて辺りを見回すが、須藤の姿は見えなかった。
それもそうだ。
別校舎に付いてある時計を見れば時刻は2時。
昼休みなんかとっくに終わって、もう午後の授業が始まっている。
「…はぁ」
だけど今の俺には授業に遅刻していることよりも、昼休みの時のことで頭がいっぱいだった。
…あんな展開はあまりにも予想外だった。
思いながら、赤く擦れてヒリヒリ痛む手首を見つめる。
喧嘩上等の心構えで殴り込んだ。体格差で敵わないのは分かっていたから、返り討ちに遭うのも承知していた。
でも拳に対しアイツが返してきたのは愛撫の手。
与えられたのは痛みじゃなく性的快楽で。
・・・つくづく、
アイツの思考回路はよく解らない。
ボコるより、屈辱感を与えるほうが効果あるとでも思ったのだろうか。
それとも須藤はアレか。
ホモなのか。
だとしたら何で女遊びが酷いのか解らない。
・・・・・。
「…どーでもいいか」
溜め息混じりにそう呟いた。
アイツのことであれこれ考えるなんて
時間の無駄に過ぎない。やめよう。
須藤についての思考を遮断し、乱れた制服を整え、教室へ移動しようと立ち上がった、..その時。
ブレザーの、ポケットに入っている携帯が小刻みに震えた。
「…?」
知らないアドレスだった。
それもそうだろう。
他人と関わりたくない俺は、親の電話番号しか登録していないのだから。
不思議に感じながらもボタンを押す。
内容を読んで、眉をしかめた。
"今から視聴覚室へGo!"
…なんだこれ…。
その訳の分からない内容の下に、3つの矢印が下向きでついている。
「…??」
気になって矢印の方向に従う。
目を、見開いた。
そこにあったのは、俺の写真。
ヤられた時の、恥ずかしいあの格好。
…送り主が分かった。
俺は、視聴覚室へ走った。