―君のその白く流れるような首筋を見ると、吸い付きたくなる…
その衝動を抑えて紳士になる。
「もう一杯どう?」
「…ううん。あんまり強くないの…お酒」
そう言って、彼女は腕時計に目を落とした。
「もう帰らなくちゃ」
「あ…こんな時間か。ごめん、つき合わせて」
「ううん。いいの楽しかったから」
「ありがとう。助かったよ、誰かに聞いてほしくてね…」
「わかります。私もそういうことあるもの…」
会計はカードで済ませ、二人で店を出た。
なに…怪しい関係ではない。
二人で一緒に歩いている所を見られたって思いつく理由は山ほどある。
…本当に何も無いのだから。ただ、僕が君を抱きたいという衝動以外は。
しかし、彼女はわかっていてこの誘いにのったのだろうか…普段見る彼女は地味な大人しめなパンツスタイルなのに、今夜は背中が大きめに開いたワンピースだった。
しかも、髪はアップにして…
僕はうなじから背中にかけての美しいラインが好きだ。女性の華奢な曲線にそそられる。
君のことを何度この手で抱いただろう…夢の中で。
会社ですれ違う度に香りの違うことを僕は知っている。
今夜は甘い、少しスパイシーなローズだった。