世間一般では男女でセックスすることで快楽を得る場合が多いが、自慰、オナニー行為だけでも満足する男性が1人でもいられたら、著者はうれしい。
今年36歳になる智明(ともあき)も、その1人である。会社勤めで、職場で知り合った今の妻、そして1人娘を授かり、ごく普通の幸せな家庭を築いていた。
ただ、夫婦でのセックスは少ないのだが、お互いに不満もなく、日々を過ごしている。
だから、もっぱら智明の快楽はオナニーだ。高校時代に初めて射精を経験し、その時の刺激と気持ち良さを忘れられないでいた。オナニーするための刺激物、俗にオカズと呼ばれるのは、独身の頃はアダルトビデオだったが、今は違う。
夕飯を終え、書斎に入ると、智明は本棚にある一冊の書籍を取り出した。取り出したと言っても、つい最近、実家の押し入れを片付けていたら思い出の品と一緒に出てきた物だった。
ページ数が少ない割りにはズッシリと重く、表紙には金ぶちの文字が書かれている。
誰もが見覚えがあるだろう、学校の卒業アルバム。人生の節目に手渡される中でも、智明の記憶に残るのは、高校の卒業アルバムだ。