『ありがとな』
ニコッと人懐こい笑顔を向けながらフーッと煙を吐く直哉。
『ちょっ…タっ…タバっ…』
『何言ってんのかわかんないけど、灰皿ないかな?』
『あるわけないでしょーがっ!未成年の部屋にっ!』
ご近所に聞こえないように、かつ最大の叫びを上げるという大業をやってのけた私に
『あっそ。んじゃこれでいっか』
シュシュやヘアピンが入れてあるアルミの小物入れをひっくり返してトントンと灰を入れた!
(あぁ…お気に入りの箱が…)
さっきのモヤモヤがムカムカに変わってゆく。
『もぅ!なんなの?勝手に人ん家に入ってきて!タバコなんか吸って!何しに来たのよ?』
突き飛ばしてやろうとしたが、サクッと避けられてしまった。
『俺、明日誕生日なんだよね?で、プレゼント貰いに来るって言ったよね?』
…言った。確かに言った。でも、
『なんで私の所に来るのよ?亜子でしょ?プレゼント貰うなら亜子でしょう?』
『…はぁ?亜子って誰?』
『誰って…だっ、だって、私の事だって知らないくせに!』
『果歩は知ってる』
咥えタバコでそう言うと、果歩の両手首を万歳するように頭の上に上げて壁につける。
更に器用に片手で持ちかえ、もう片方の手でタバコを消した。
『フーッ』
最後の煙を果歩に吹き掛け…
『簗瀬果歩。15歳。身長148cm。バストは65のDカップ。気が強い。友達がいない。…だろ?』
『う…っ…』
(なんだろ?なんでこの人は私の胸のサイズなんか知ってるんだろ?
身長は…まぁチビだし大体の予想かもしれないけど…)
子供の様な体型に不釣り合いに大きくなったオッパイを果歩自身とても気にしていた。
『だっ…だから!そんな話じゃなくて!何で私… 』
『お前さ、友達いないだろ?で、気が強いから悩みとか他人に話したくないだろ?で、ちっこい体に大きいオッパイだろ?』
ばたばたばた
嫌な予感がして暴れてみた。
でも直哉君…きっと170?いや、もっと背高い。
バスケやってるから逞しい身体つきだし。
かなわないよ…
『お?抵抗はもう終わりか?じゃあ本題に入ろうぜ』
『本題って?』
『プレゼント。誕生日の』
(…ふぅ…
今月のお小遣い合わせて確か一万円くらいになるはず。
なんとかなるでしょ。これだけあれば)
安堵のため息をそっとつく。
『プレゼントはお前。果歩だよ』