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転校生

小ガニ 2014-10-29投稿
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予感めいたものなど一つもなかった。

教室で彼女を初めて見た瞬間でさえ、どこか他人事の様に思い出される。

僕はその日あるトラブルを抱えていて、終日イライラする気持ちを押さえきれなかった。

放課後、友人の誘いも断り足早にバス停に向かう途中、携帯が鳴った。

「よータケト、今晩空いてるか?欠員が出てよー。急な事で困ってるんだ」

僕は何も返さず、通話終了ボタンを押した。
とにかく気分が悪かったのだ。

だからもし、あの場所で、あのタイミングで彼女が僕に声をかけてこなければ、などと思う事がある。


「広山くん、だよね?」
彼女は少しだけ憂いを込めた声で、
「じつは…お願いがあるんだ。ちょっと、変な事かもしれない」

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