ケイコに関する声が多かれ少なかれ僕の耳にもきこえてくる頃には、彼女は周りから一目おかれる存在になっていた。
転校生というものが大体においてそうであるように。
「美人というよりは可愛い感じだな」
「彼氏いるのかな?」
浮き足だった友人たちをよそに、僕は昨日の出来事を思い返していた。
視界の中に、少し栗色がかったポニーテールが揺れている。
にぎやかな女子のグループの中にいたケイコがこちらを見て微笑んだ気がしたが、僕は自然に身をかわした。
「あっ、今こっちみて笑ったぞ!」
「やっぱりいいなぁ。今度誘ってみようかな」
はしゃぎだす友人たちから距離をとり、僕は最近休みがちだった日課を再開すべく、ただただ帰宅のことを想った。