しばらく二人して歩き、とりとめのない話をした。
学校のクラスメイトの噂や、お互いの近況など。
ケイコはレンタルCDの返却の帰りらしかった。
話してみてわかったのだが、ケイコはとても聞き上手で、時折みせる表情は相手との会話を心から楽しんでいるかのように感じさせた。
少し多弁になっている自分に気づいた時には、道の脇に据えてあった腰かけに、二人落ち着こうとしていた。
「ねぇ、広山くん」
ケイコは心なしか抑えた声で、おもむろに脚の向きをこちらへ直した。
少し短めのデニムスカートから、白い太ももがあらわになっている。
その刹那に、僕の太ももにじんわりと熱がこもっていく。
ケイコの手のひらだった。
「ちょっ…おま、やめッ」
言葉がとっさに出なかった。
その次の瞬間、
「ふふふ…あはッ。アハハハ」
こともあろうに、ケイコは口に手を当て心底おかしそうに笑いだした。
「何だよ」
「ふふっ、ごめん。広山くん、かわいいなぁと思って」
冗談じゃなかった。
僕は人知れずスイッチのレバーを引き上げた。