「主よ。我の陰茎を勇猛な物へと導きたまへ。
真性なる神よ、我の陰茎を脱皮させたまへ。
アーメン」
そうして握るソレを4回振り、〈チンポの印〉を描くのだった。
しかし、当たり前のようだが奇跡など起こるはずもなく。
男はソレを振りかざし、なかば惰性で右手を上下に動かした。それは毎日行う‘儀式’であるのだから、それしか仕様がないのだ。いま上下にしごくこの手を止めてしまえばきっと、急いた己の心臓だけがあたかも意思を持つ生き物であるかのごとくこの胸の肉を引きちぎり、どこかへ勝手に行ってしまいそうだった。
全身から汗が噴き出し、心ばかりがはやった。もうどうしようもなかった。いつだってそうだ。己の飢えを癒すのは己自身なのだ。
「ウゥ……ッ!」
極致。
男はおもむろに立ち上がると、台所へと向かった。
手を洗い、まな板と包丁を取り出すと、玉葱を切り始めた。今晩は彼の栽培した玉葱で、彼の得意なミートソースパスタをこしらえる。これが、いつもと変わらない彼の日常、彼の夕食の風景なのである。