【小さなミラクルと、人を愛する場合のセックス】
冷え込んだ朝だった。
男はマグカップに温めた牛乳を注ぎ、口元へ運んだ。立ち上る湯気が白く咲いたダリアに見えたその一瞬、奇跡は起きたのかもしれなかった。
女がストンと堕ちて来た。
目の前に、女が居るのだ。
尻もちをついたまま、大きな瞳をしばたたかせるその女の名はCactus・Dahlia。彼女は自らを‘カクタス・ダリア’と告げ、「ダリアと呼んでネ」と囁き、男の耳元へ吐息のようなKissをした。
ダリアはリンネル素材のような白色の布をまとっていた。しかし、その肩口で結ばれた布の先をほんのわずか引っ張っただけで今にもハラリと落ちてしまいそうな着衣だったため、男は容易にダリアの裸体を想像できたのである。
細く伸びた手脚には不釣り合いなほどの、ふくよかな胸。白陶のような肌。実際、触れていないから、ほんとうに冷たい体なのかもしれない。男は思う。
ダリアという名のマリアだな、これは参ったぞ。