男は天井を見ていた。
その虚ろな眼差しの先にはやはり、天井しかなかった。
ベッドの上へ、なかば強引に倒された男は、己の下半身で何か遊んでいる女の肉体の柔らかな肌質を感じていた。
視線を落とすとその足元には、裸のダリアがいた。
「裸……なんだね」
男は見た通りの事を思わず言葉にしてしまった事を少し、後悔した。もっと気の利く言葉もあるだろうにと、己を情けなく思った。しかし、やはり出てくる言葉はそんなものばかりなのである。
「おっぱい……出しちゃったね」
「おっぱい……大っきいね」
「肌、真っ白なんだね」
「腰、細くない?それって」
「お尻、まぁるくって何かおっぱいっぽいんだね」
「お尻……真っ白なんだね」
「お尻白くて眩しいね」
「乳首……だね」 ……
……
男は‘発情’を爆発させてみたかった。しかし爆発のさせかたを知らなかった。そもそも今、目の前で戯れる女――…人間のその熱を帯びた肉体に触れていいのだろうか?と、考えていた。己の肉欲だけで女に触れてしまう行為は、懲罰ものであり、背徳行為なのだ。
そう、神は見ている。
この行為を、
痴愚を、
そのすべてを、神は――!