おなごめ・むさしと言うその男の名は、いかにも男性的な名ではあった。好きな女に対して愛が止まらない熱病があるのと同様、彼には特異体質的な持病があり、それは様々な物・事柄・シチュエーションにて、わずかでも官能的思考を認識するとそれを察知した彼の彼自身――ペニスがむくむくと勃起し、しかもそれは止むことがなく、しばらくの間そのむくむくが継続するという、奇病であった。
その感受性は強く、勃起が止まらないのである。
さらには、おなごめ・むさしのソレのやっかいなことは、彼の彼自身――ペニスが、なんと、彼の顔の真ん中……人間でいうちょうど‘鼻’の位置に生えているという事実だ。
人間でいう‘鼻’の位置、と書いたが、彼だって紛れもない人間であり、特段変わった奇妙奇っ怪人種というのでもなかった。顔の中央のペニスを除けば。
彼のあだ名は「ピノキオ」だった。