(でもどうして今頃になって、あの頃の夢を見るのだろう・・・?)
結局学校に到着してもその事が尾を引いて何やら釈然としない自分がいたが、期せずして、とは言えども里を抜けた身である、間違っても会うことは無いであろうがしかし、それでも幸人には何処かで”もしかしたら”と言う希望にも似た思いがあった。
「オス、幸人」
「かなめじゃん!!」
昔日の自分との邂逅を果たしていると、頭上から名前を呼ばれ、そちらへと向き直ると其処にはクラスメイトで親友の桑原 要の姿があったが、義理堅くて頭も良い彼とは何かと気が合う事から自然と友人としての時間を過ごす様になっていったのである。
因みに生家である桑原は医師の家系であり、代々時の権力者や有力大名御抱えの名医として名を轟かせ、また現代に於いては国立病院の院長等を輩出していて、彼自身も行く行くは何れかの病院の長としての地位を約束されていた。
激務である医療現場で生き抜くためにかなり鍛えられた体格をしており、しかも既に親戚筋で幼馴染みの中原 三依と言う許嫁まで持っていた(因みに既にお手付き済みであるが当然、本人たちの同意の元であると共に、これは家同士の”ここまでやったのだから必ず娘さんを嫁に迎えます”と言う約束の証でもある)。
大切な事から下らない事まで、彼からもまた、様々な事を教わったし、逆に彼も教えたが、兎に角軽い風貌とは裏腹に一本筋が通っており、幸人と違って爽やか系イケメン、最早完璧超人である、かの様に思われていた(幸人も最初は、そう思っていた)モノの、実際の本人は重度の厨二病と言うか、少し感性がずれている箇所があり、かなりな高スペックを誇るモノの心配でどうしようも無いのもまた事実であった。
例えば修学旅行に京都へと行った際、有名な神社仏閣や観光スポットを巡る時間があったが、折角歴史と由緒のある場所に来たのだから、と更に”一日に付き、自分の体験や思い出、感じた事を一つの句に表すこと”との課題が合わせて設けられていたのである。