彼らの内、旦那を”東雲 幸人”、女房を”東雲 早苗”と言ったが二人は生まれ落ちた瞬間からの幼馴染みであり、不器用乍らも純粋にずっと互いを思い続けた恋人同士だったのだ。
幸人は少し長い漆黒の癖っ毛と同色の、奥に静かに光を湛える黒曜石の眼、何処か幼さの残る精悍な面構えをしており一見、大人そうな印象を受ける。
しかし鍛え抜かれたその褐色の肉体は凄まじく、強靭な骨格に支えられた体躯の至る箇所には極限まで圧縮された良質な筋肉の幾層にも重なったモノがギッチリと着いており、またその陰茎も同様に凝縮された海綿体が解放されて黒光りした巨大なモノが周囲に太い血管を走らせつつもピクピクと脈を打っていた。
一方の早苗は上質な黒糖蜜を垂らした様な長くて滑らかな髪の毛にパッチリと見開かれて芯まで透き通っている黒童の瞳、全体的にはやや小柄だが水を弾くほど張りのある、ほんのりと赤みのさした白雪色の肌をした、明るくて可愛らしい女性だったが、幸人と共に生きて彼に抱かれ続けていた為に人妻として成熟して来たのか、最近では其処に艶やかさも加わって益々、その美しさに磨きが掛かって来ていた。
そんな幸人の実家であり、早苗の嫁ぎ先でもある”東雲”は元々剣術や柔術等武道に特に優れた血筋であったが其処へ更に陰陽道や医学、果ては忍の技まで取り入れた全く新しくて強力な武術を完成させており、それを代々の当主を頂点として門人達が、密かに現代まで伝えていた。
一族は皆、遺伝的に恵まれた肉体と身体能力を誇っていたが、特に生命力やその身に宿す波動エネルギーは質、量共に他を圧倒しており、また心身を育成する武道に触れると同時に色々と躾に煩い家庭環境で育つ為に(幸人の場合はそれに加えて周囲への反発もあって)、不屈の精神力をも養う事が出来たのであるが、それらを更に激しい鍛練に因って徹底的な迄に高めていたのである。
また早苗の旧姓は”小林”と言ったがそちらも、やはり古くから続く呪術と学問の家柄であると同時に弓道や合気道等の”護身術”を得意としており、それらを元に開発した幾つかの強力な秘術を用いて集落の為に貢献して来たが、彼女はその一族の中でも飛び抜けた能力を有していた逸材であった。