翌日の佳奈は全くいつもと変わらず、昨夜のことなど覚えてもいないように見えた。
二人きりになることは至難のわざだが、なんとかメールアドレスを教えてもらった。
『後で買い物に行きます。どうしますか?』物欲しそうに見えたのだろうか…私の顔を見て含み笑いをしている。からかわれているのかも知れない。が、行くと返信した。しかしどうやって二人きりになるのか見当がつかなかった。
案の定妻が一緒に付いて来た。
女性の買い物に付き合うのは好きではない。妻はご多分に漏れず買い物が長い。ただみやげを買うだけなのに余計な所へも寄り道するのが常だ。今日もそのようだ。
「いけない!家に忘れ物してきちゃった。」ここから近い佳奈の家。妻は連れて帰ってあげなさいと言わんばかりに目配せした。
「でも悪いわ。隆さんに…」「隆に来てもらってたら遅くなるわ。ウチのが送るわよ。あなたもどうせ退屈でしょ?あたしはウインドウショッピングしてるから、…ほら」
急かされるように追いやられたが願ってもないチャンスだ。
私は佳奈を車に乗せてすぐ近くの義弟夫婦の住むマンションへ向かった。