こっちの営業所に来てからずっと善くしてくれる女子社員がいる。みんなにはナオちゃんと呼ばれる人気者で、かなりの美人だが、ボクはそれほど意識しなかった。彼女は自分の美貌をちゃんと知っていて、それなりにプライドもあるはずだが、それをおくびにも出さない。人のいい、八方美人タイプ。ボクはこういう子は好きなんだけど、今はあまり食指が動かなかった。
「あの、田村さん、」ある日会議室で声を掛けられた。改まった口調に振り替えると、他の女子社員が丁度入って来た。
「やっぱり、何でもありません。」
タイミングが悪かったんだろう。ボクは帰りにお茶でも飲むように誘った。
「本当にお茶なんですね」
「え?」
「お酒が良かったな。」
それもいいけど…
「何か相談があるんじゃないの?」
彼女は緊張した。指先をもじもじしている仕草は意外だった。ボクには何となく言いたい事がわかった。
「恋愛相談?」
「…告白です」
こんな美人にしては勇気のあるひとことだ。少し見直した。
「ナオちゃん…今は…だめ…」
「好きな人…いるんですね…」
「わからない。まだ」ボクは何も説明してあげられない……アサミのことなど…