例えば催促の電話を入れる等は当然として、更に他の子会社が開発したモノには大量の注文を、それも賛辞のコメント付きで入れるが其処のモノは買い控える等人脈と資産を駆使してネットの強さと不透明さをフルに活用し、ステルス・マーケティングギリギリの手段に訴えたりもしたのだ。
しかも元々、この子会社は余り有名な処でも無かった為にまだまだ特定の客層が定着して居なかったため、これ等の行動は深刻な営業妨害の一歩手前の所まで行っていた。
「それに一番苦しめられていたのが、姉貴のダチだったんすよ」
入学して暫く経ち少しずつ仲が深まり、色々と話し合える様になって来たある日、時折休みの日までバイトをする織香に美雪や伸子が”少し休んではどうか”と尋ねた所、彼女がこれ迄の経緯を聞かせてくれたのであるが、要するに切っ掛けとなった商品を開発したのがその女性であり、嫌がらせ紛いの事を執拗に受けていた、と言う訳だった。
「それを知った姉貴、実際にやっていた上司と先輩連中に食って掛かったらしいんです、”止めろ”って言って」
だがどういう心根の持ち主で有るにせよ、此処は向こうが一枚上手で”別に我々は何もしていない”だの”誓約書があるだろ”と突っぱねられ、また別の子会社の商品を大量に買っていた人間にも話をしに行ったら”俺はこれが好きだから買ってるんだ、誰に迷惑を掛けてる訳でも無いし別に勝手だろうが”と全く相手にされなかったらしい。
「そりゃ確かに本当に好きで買ってるのだっているだろうけれど・・・。あいつらに限ってそれは無いぜ、しかも色んなのに成り済まして何度も何度も注文している奴だって居たんだ。普段なら兎も角、時期が時期だ、潰そうとしている魂胆見え見えだろ!!」
しかし証拠が無ければどうする事も出来ず、また喧嘩っ早い性格の彼女も確かに一社会人として礼節に則った、冷静な行動をしたとは言えなかったのだ。
結果彼女は会社を辞めざるを得なくなり事実上、追い出された形となってしまったのだが責任を感じた透子は”仕送りをしようか?”と言った両親に”私が稼いで食べさせるから”と断り、その言葉通り好き嫌い無く必死で仕事を探し、こなし続けていたのである。