薫はただハルカを抱き締めて泣いていた。いつも力強い薫…なのに今は弱く感じた。薫は悟ったのだ。
世の中にはどうにもならないものも有ると。ハルカはもう手に入らないと…
だからこそ無我夢中で求めた
「お願いだから…いかないで…ハルカぁ…」
力無く薫は言った。手は震えている。ハルカは思った。
何て弱くて情けない姿だろう…何てせつなくて愛しい姿だろう
この人は私がいなくちゃ駄目になる…私が支えなきゃいけない…
でも――あの時感じたアヤメとの情熱を否定できない―――止められない――――
「薫…」
ハルカはうつ向いてる薫に手を伸ばした…その頬に触れようとした瞬間―――\r
「ハルカっ!!!」
誰かが部屋の戸を叩いた。薫は不思議そうにドアを見た。
今の声…まさかアヤメじゃないよね?アヤメにこんな姿見せられないよ…
「誰だ?待っててハルカ」
薫はハルカにタオルケットをはおらせ玄関へ向かった。
胸騒ぎがする。駄目――そのドアを開けないで…薫っ!―――――\r
がちゃ
「誰だ……………あっアヤメ…先輩?」
えっ…アヤメ?やめて……来ないで…
「挨拶は後だっ…上がらせてもらうぞっ!」「ちょっ…先輩っ!やめてくださいよっ」
やめて……来ないで……嫌……
一瞬でも心が揺らいだ私を…他の男に抱かれた体を見ないで…!
「ハルカっ!」
やめて!!!!
寝室のベットの角にハルカは震えながら座っていた。タオルケットをはおっていたが服はやぶられ、抵抗した時に出来た傷跡から血が出ている所を見れば何があったか一目瞭然だった。
極め付けは、その首筋に付いてる血のようなキスマーク…
「…くっ!!薫っ!」
薫は何かを察したかのように落ち着いた顔でアヤメの後ろに立っていた、
「お前だったのか…浮気相手は…」