だが今の彼等にとっては仲良く過ごしてくれるのは嬉しいモノの目のやり場に困るラブラブ空間を、それも事ある毎に量産する両親でしが無かったのであるが案の定、げんなりとしている息子達の目の前でその日も既に自分の仕事を片付けた父はやって来るなり母の名を呼び、それに応えて駆け寄る美人妻を抱擁して熱い口付けを交わす。
「みんな良い子にしてたかい?お母さんを困らせちゃ、駄目だぞ」
「解ってるよ、父さん」
「平気だって!!」
ドーナツを頬張りつつもそう応えるヨシヒコとクロードにリディアと株達は或のは苦笑したり、ジト目を向けたりと様々な反応をするが何にせよこうして家族で元気に毎日を送れている事が、カズキとりディアには何より嬉しかった。
正直決して楽では無いモノの今の所、彼の旅籠修業は順調であり各部屋の清掃やリネンの交換、ベッドメイキングや料理の盛り付けや運び方等、教えられた通りに宿泊施設での接客技術や心得を全てこなして見せていたし、またそれ以外にも例えば、妻に相談し乍らではあったが訪れる客が理解して喜べる様な室調や献立を考える等の、所謂“おもてなし”もキチンとやってのけており、問題無い処かこのまま行ければ十二分に夫妻でグランゾ、コーネリア両名の跡を襲えるであろう能力を身に付けつつあったのだ。
「二人で一緒に、頑張ろうね」