そこからは常に毎秒一千リットルもの水が流れ込んで激流を形成しており、それ故にまず、落ちれば助かる見込みは無い。
「はあはあっ。シュバルツ許さない、絶対にっ。何としてでもお前だけはぁっ!!」
「はあっ、はあっ!!い、いい気になるなよ小僧っ。お前ごときが本気でこの俺様に勝てるとでも思っているのか!?」
吐き捨てるようにそう告げる大男、シュバルツは年齢四十歳前後、頭は丸坊主でその顔は猛々しさと禍々しさに溢れており、筋骨も発達して隆々としていた。
よく日焼けした赤銅色のその体は見る者を威圧するがしかし、少年は少しも臆することなく立ち向かい、もう何発も絶妙なタイミングで固く握られた拳を、或いは鋭い蹴りを、次々とその肉体にめり込ませて行くものの、彼の濃い肌色の小さな体はしっかりと鍛え抜かれており、絞り込まれた筋肉と太く大きく張り出した骨格に支えられた全身からは精強さが迸っていた。