カレルディウス歴二千五百三十一年六月十日。
この日、東方の大国エクシードの首都アーバインは雨煙に霞んでいた。
世界の東西を結ぶ一大交易路“シルキー・ウェイ”の中央部を抑える形で成立していたこの国はしかし、その大半を荒涼とした大地に覆われていたにも関わらず幾つかの巨大な湖と大河、そしてオアシスのお陰で農業や放牧が盛んであり、また二毛作や農機具等の改良により収穫量が増大していて食糧はそれなりに豊富であった。
加えて古代より幾つかの大帝国が勃興していたここは当初より交通網と通信網とが高いレベルで整備されており、それ故に商業も発達していて街道筋には毎日のように市が立ち、宿場町は証人や旅人でごった返していたのだ。
彼等の落とす金は莫大な利潤を生み、更に穀物が食糧事情が改善された事で反乱なども滅多に起こらず、安定した治安と国家収入とが継続されていた。