一目で極東の人間であると解る彼の体躯はしかし鍛え抜かれており、また精悍な面持ちのその顔にもホッとする人懐っこさが滲み出ていてどちらかと言えば優男であろう、スクールカーストでも上の下に食い込めるルックスの持ち主であると言っても良い、・・・唯一、そこに不似合いな、大きな向かい傷が付いている事以外は。
「ソ、ソーくん。私と相合い傘がしたいのね!?」
「いや、そうじゃなくてですね。風邪を引いたら困りますから・・・」
「あん❤照れ屋さんなんだから。でも気にしなくて良いよ?だってソーくん、荷物凄いでしょ?遠慮しないで使ってよ」
「いやなに言ってんですか、僕のじゃ無いですよ。ってか僕の荷物なんか1個もねーだろ、あんたのだろうが、これ全部あんたのだろーが!!」
自分の荷物を押し付けている事をすっかり忘れ、サラリと気遣いを見せるナナミに対して青年が突っ込みを入れるが彼こそはあの日、嘆きの断崖から転落して絶命したと思われていた、綾壁蒼太本人であったのだ。