そこまで言われて漸く蒼太も思い出したが確かにこの少女とは一年以上前に一度、街で会っていたのだがその日、蒼太は母親である綾壁ラヴェンナの付き添いで王都ダグラスの西部にある“イースタン・デパートストアー”へとやって来ていたのだ。
因みに母のラヴェンナは買い物にべらぼうな時間を掛ける人であり一、二時間町は当たり前、時折付き合わされる兄達も辟易としてしまう事もあったがしかし、最早慣れっこの蒼太は対照的に、久し振りに連れて来られた高級百貨店の店内をウィンドウショッピングしたり、入っている書店屋さんで立ち読みをしたりして気儘なホリデーライフを満喫していた。
「あいたたたたたた・・・!!」
「お母さん、大丈夫・・・!?」
そんな中、与えられた小遣いでミルクセーキを堪能していた少年の瞳にふと、三階と四階の間のテラスに設置してあるベンチの傍で蹲っている、一組の親子の姿が飛び込んで来るがどうやら母親の方が急性のぎっくり腰になってしまった様子であり、しかもそれは立ち上がれない程に酷いらしい。