そしてそれを担当していたのが傍らに控える初老の紳士、ガイヤール・デュポンであったが主要銀行の頭取をも務めた事のある彼は金の感情にも長けておりかつ謀略面でもそれなりに頼りになる男だったからシュバルツには重宝されていた。
そんなシュバルツ自身は元々特権階級の生まれであり、尚且つヒエラルキーで強者の側に立っていた事もあって、“力がある者は何をしても良い”と本心から思っており、現に金と権力とに物を言わせて時には人が努力の末に勝ち取った成果を奪い尽くし、またある時は罪なき人々を貶めてまで自らの名と勢力とを台頭させることに躍起になっていたのだ。
そんな彼を危険視していたのが無憂派の面々ともう一人、国王であるアンリ・ペリオット三世に仕える宮廷魔術師であり、且つ王族の後見人でもあった“黒曜の賢者ルーカス”であった、多くの困難と厳しい修行を乗り越えた果てに人の心を読み解く力を授けられた彼の脳裏にはこのシュバルツの持つ禍々しいまでに鬱屈した性格と思考とが恐ろしく不快なものに映り、またそれと同時におよそ人間とは思えない程に腐りきったその性根にも辟易としていたのである。
(彼をこのままにしておけば、いずれ必ず国に、人々に災いをもたらす)