「違う違う、何度言ったら解るんだ、蒼太!!」
人里離れた綾壁家秘密の鍛錬場内に亮太郎の声が響くが周囲を切り立った崖に囲まれていた一キロ四方のこの空間には体を鍛えるために必要なものが何でも揃っていた。
一つ三百キロはあろうかと言う巨大な岩石に樹齢二百年を超す杉の大木、水捌けの良い花崗岩の平べったい大地は持久走に向いていたし、三百メートルの高さを誇る断崖絶壁の上からは、溢れ出た湧水が溜まって泉となり、それが更に大瀑布となって流れ落ちている。
それは強い勢いのまま下流へと向けて下って行き、やがては大河セリーヌと合流するのであるが、その急流の中で姿勢を保ちつつ流されないように踏ん張ったり、逆にそこから滝壺へと向けて泳いだり、また滝に打たれつつ精神を統一する修行もやった、ただし。
これらはある意味、非常に危険な行でありとてもの事油断が出来ない。