(ああ、誰かコイツを逮捕してくんないかな・・・)
いつ果てるともなく続く過酷な日々は純朴な彼を、実の父親の逮捕を夢見る少年へと変えてしまったものの確かに、この事が明るみに出たならば虐待だの保護義務違反などでしょっ引く事は出来たかもしれなかったが問題なのは父祖の持つ、その人間離れした実力だ、自分と同じ修行をキッチリとやり遂げ、尚且つ六年ほど世界各国を巡っていた彼の力は凄まじく、現に留火は“武術の達人”と言われている存在や、町の人々を恐怖のどん底に叩き落していた暴走族の幹部共を父がたった一人で返り討ちにするのを何度となく目撃していた。
それは人間の間だけには留まらずに、例えば近くの山の祠に封印されていた妖怪が逃げ出した際は即座にそれを見抜いて駆けつけ、逆に調伏して使役してしまっていたし、また幽谷に数百年前から隠れ住み、力を蓄え続けていた鬼の鳴動を感じ取るとすっ飛んで行き、瞬く間にそれを退治してしまった、そして。
そんな父祖の薫陶を受けた留火も本人は否定していたものの徐々にその才能が開花しつつあり、恐ろしいまでの底力を発揮しつつあった。