暖燗家は元々、この町の庄屋を務めており古くから名士として名を馳せていたのだが現在の当主夫妻には子供がおらず、真白は知り合いのイタリア人神父から譲り受けた養女であった、しかし。
二人はこの子を、それこそ実の娘のように可愛がり、愛情を注いで育て上げた、穏やかに朗らかに、そして時には厳しくしながらキチンと向き合い、見守ったのだがその甲斐あってか、はたまた元からの資質故か、ともかく真白は明るくて優しい、真っ直ぐな子に育ってくれた、多少お転婆で向こうっ気が強かったことは否めないがとにかく、卑怯な事や卑劣な事には馴染めない、意志の強い子に育ってくれたのだ。
そしてもう一つ、努力家で頭も良かった彼女はよく機転を利かせては難しいお手伝いや買い物などをそつなくこなしてくれたがこれは将来、とても大きな武器になると夫妻は見ている、もしも真白が誰かに嫁ぎ、何か困ったことが起こった際にはきっと役に立つ事だろう。
「留火ちゃん、遊びましょう?」
「ねえ留火、次はかくれんぼがしたいわ」
「留火、一緒にご飯食べよ?」