そんな彼女にはお気に入りの少年がいた、隣の大津国道場の息子で名前を留火と言ったが大人しくて大抵のことは“うん、いいよ”で済ますこの少年はしかし、その実真白以上に意志が強くて強引で、かつヤキモチ焼きだった、何時だったか真白が別の幼稚園の男の子に話しかけられていた際にはいきなりそこへと割って入り、彼女の手を引いて別の場所まで連れて行ったし、またある時、三人組のガキ大将グループ(三人とも年長組)が真白に目をつけて“俺たちのグループに入れよ!!”と迫った際には静かに、しかし心の底から激怒して連中を、あっさりと返り討ちにしてしまったのだ。
「マジか!?」
「すげーな、あいつ・・・」
「こんなに強かったんだ、留火って!!」
その一件以降、周囲の彼を見る目は変わっていったが何よりも一番驚いたのはやはり真白だ、確かに留火は優しくて思いやりのある子だったがこんなにも強くて頼もしいとは思っていなかったのだ、だから。
それを知ったとき、彼女はとても嬉しくなった、何故かは知らないけれども自分でもどうしようもない程の喜びを覚えて誇らしくなるがこの時、彼女はすでに恋に落ちていた、彼の笑顔、話す言葉、ふとした時に見せる他愛ない仕草の一つ一つが眩しくて愛おしい。