反対に何かを言おうとしていた真白の眼からは大粒の涙が零れ落ちて行くが、普段から色々と気を回しすぎて自分自身の気持ちを抑え込み続けていた彼女はついにはそれが出来なくなってしまい、慟哭となって現れてしまったのだ。
「・・・会いに行くよ、絶対」
「ふえぇっ?」
「絶対、いつかもっと大きくなって、強くなって。絶対に君の所へ行くから、会いに行くから。だから」
待ってて、と留火が告げるがそれを見た少年は少女をしっかりと抱きしめると力強く言い放ったのだ、“いつか必ず会いに行く”と、そして。
その時の彼の横顔と言葉を、真白は決して忘れなかった、それほどまでにこの時の留火は頼もしく、暖かく、なにより男らしかったのだ。
「・・・わかった」
待ってる、と告げて自身も彼に抱き着くと、真白はそのまま唇に唇を重ね合わせる。
しばしの間、抱き合っていた二人だったがやがて包容を解くと真白は何度も彼の方を振り返りながら用意されたハイヤーに乗り込んで、馴れ親しんだ小川町を後にした。