「ありがとう、おじさん」
「チャオ!!日本人は優しいからな。だまされねぇようにしっかりやるんだぜ!?」
見た目チョイ悪おやじ風のタクシードライバーに送ってもらい、空港から山道を車で揺られる事一時間半、ようやく目的地であるメリアヴェッラ高等騎士学院へと辿り着いた彼は、正門前に佇んでいた。
そう、17歳になった留火だ、15歳で基礎的鍛錬の全てを終えた彼は、父親である父祖の勧めもあって進学した高校を休学し、代わりに二年ほど、世界各国を旅して回っていたのだ。
その目的とはずばり武者修行の為であり、自らの持つ見聞と経験とを高める為であったがその結果、巡ったいくつかの国の言語や文化には堪能になったし、また“極限状態において生き残る術”を徹底的に高める事が出来た。
なにより。
過酷で長い旅の途上でその実力は一層、完成されたものとなり、今では肉体の持つ生命力や強靭さで成体グリズリーの七倍、力はアフリカゾウの三倍、精神やオーラに至っては“鬼”と呼ばれる存在の五倍という、明らかに“人間としておかしいんじゃないの?お前”と言うレベルにまで達していたのだ。