驚いて固まってしまう少女をしり目に、留火は平然としていたが見たところまだ買ってから一年も経っていないであろうその車は時速100キロ近くのスピードで正門へと向けて突進してきた、このままでは開きっぱなしのゲートを潜り抜けて校舎かどこかに激突し、下手をすれば大惨事になる可能性がある、放ってはおけない。
「少し離れてて」
驚き戸惑う少女にそう告げると留火は暴走車へと向き直り、足を踏ん張らせて腰を深く落とす。
いわゆる“正拳突き”のスタイルだがその直後、車が彼に激突する瞬間、少女は思わず目を伏せた、周囲にはドギャアァァァァァァァーッッ!!!と言う轟音と共に金属片が降り注ぎ、オイルの匂いが充満する。
「・・・あ、あ。ええっ!?」
やがて恐る恐る目を開けた少女が思わず驚愕の声を挙げるがそこには大破してひっくり返り、スクラップ確定となったランボルギーニと、それに向かって平然と残心を取る青年の姿であった。