ボクはテーブルから離れた。タバコに火を着けて、ライターを床に放り投げた。
「お兄ちゃんだって、ここでシてたんでしょ?」
「…」
「ずるい…私にばっかり」
「さっきまでシてたくせに何しにここへ来たんだ」
めちゃくちゃなことを言ってることはわかっている。
「兄妹だよ?関係ないじゃん!」
「あぁ、そうだったなアサミはボクを見て呆れた。
「ちょっと、恥ずかしいわね、なんて格好してんのよ」
ボクはパジャマにサンダルで飛び出して来たんだ。
「どうするつもりだ?こんな時間じゃあ…」「誰かに泊めてもらおうかなって…」
「だめだ…戻ろう」
「…あそこは…嫌…」きっぱりとした口調。ボクは車で送ることにした。
「あそこは…どうして嫌なんだ?」
アサミはボクをじろっと見て、何も言わずに前を向いた。
アサミのことなんか何でもわかると思ってた。ボクの家来で子供で、幼稚で…でも…今はわからない。ボクの妹のくせに、なんでこんなにボクを苦しめる?「なんか寂しい…」
「何が?」
「お前が何考えてるかわからない。」
「私だって大人になったの…」
「…そうだな…」
アサミはボクをなぐさめるように手を握ってくれた。
街を通過して、山勝ちの県道…時々場違いなホテルのネオンが目に飛び込んで来る。ボクはアサミの了解も取らずにそのネオンの一件に車を入れた。
アサミは何も言わずにボクを見つめた。心配そうな表情だが、諦めたような顔をしている。
車庫入れして、部屋を選ぶのもボクが勝手にやった。