「ちょっと長さが足りないわね。」
「なに?」
「長いヒモ…丈夫なヤツ…」
「押し入れ…いや、上、ソコソコ。」
「ありがとね」
ネクタイとヒモを、ぎこちない手つきで、それなりに力一杯結んでいる。
「あんたばかねーヒモなんかないって言えばいいのに。」
姉ちゃんはキャッキャと笑った。ボクは諦めてるの!姉ちゃんの好きにさせてやってるだけ。どうせ手首が使えない苦しみを味わえ、とか言うんだろ?
姉ちゃんしばったヒモをボクのベッドの脚に固定した。自由に動けないボクを見て、悦に入ってる。
仁王立ちして、きめゼリフだ。
「両手首が使えないと、どんな気持ちか、味わいなさい!」
ほ〜ら。額に汗がにじんでいる。ボクはプッと笑った。かわいい…「な、なに?」
「これ、いつまで?」「あたしの気が済むまでよ!…な、何笑ってんのよ!」
ギブスが取れたばかりの姉ちゃんが結んだんだ。そのうちに逃げ出そう。今すぐにだって………?…!解けん!なんで?
姉ちゃんは高笑いした。
「甘く見たようね。」ボクは急に不安になった。
「これ、姉ちゃん後でほどける?」
「どう結んだか覚えてない。したがって…わからん。」
大丈夫だろうか…