私たち夫婦は、結婚して15年。三つ年下の妻の涼子も、34になった。二人の子供はまだ小学生だが、少ししっかりしてきて、我が家は安定期だった。
妻はパートで不動産屋の受付事務。私の母と同居なので、割と安心して働いている。
家族はこれと言ったいさかいもなく、まあ、うまくいっている。
「明日の晩は遅くなるわよ。」
「ん?」
「もう忘れてる。会社の飲み会よ」
「そうだったかな」
こんな調子で、私は妻の話も半分しか聞いてない。
子供達をせかす声の中で私は出勤する。いつもと同じ光景…全く変わらない平和な家庭…
妻と私は社内恋愛だった。特別美人でもなく、眼鏡をかけた、比較的地味な女で、同年代の女性がチャラチャラしている中で、割に家庭的な所に惹かれた。外見も、磨けば光ると言う感じで、私にとって文句はなかった。
そんな風だから、所帯じみて、それほど醜くなった気はしない。もちろん若い頃の張りのある胸や尻はもう期待出来ないが。
最近、たまに妻が若く見えるようになった。たまに不動産屋に迎えに行くと溌剌としていて、同年代の女性の中では、むしろ若くて見栄えするかも知れないと、ふと思った。