私は会話が弾むでもなく、少し退屈になってきた。
「ご主人、ちょっと奥さん借りますよ。雑誌でも読んでて下さい。」
事務所の仕切りの向こうから所長は妻を呼んだ。二人とも奥に引っ込んでしまって大丈夫だろうか…しかし、客など来る気配はなさそうだ。
奥の方でヒソヒソ声がもれてくる。そんなに遠くにいるわけでもなさそうだ。
私はトイレに行きたくなった。客間にはない。それとなく通路があって、多分この中だろうか…
二人が引っ込んだ付近に通じているようだ。
トイレらしき部屋は扉が締まり切っていないようだ。中から、ヒソヒソ声がする。
なんだろう…私はまず様子を窺った。
[伊藤さん、私は待てないよ…]
[所長、ちょっとこれはまずいです。]
商談のトラブルか?
しかし、ここはやはりトイレでは?
[いくらなんでも主人がそこに…]
[あぁ…だからだよ…私はもう…]
[し、所長…]
………?
私は隙間から覗いて見た。
………… ……!
妻が…涼子が……
目を疑った………
洋式の便座に横向きに座った妻は、壁際に立った所長のズボンの前を下から上へ撫で上げている。
私はあまりの光景に動けなくなった。頭が真っ白とはこの事か…