事務所はシャッターを閉めていた。まだ三時過ぎ…これは間違いない…私は少し離れた所に車を停め、静かに事務所に近付いた。
シャッターはまだ少し下が開いていて、鍵まではかかっていないようだ。中の様子を窺ってから、勝手口へ向かった。不法侵入かも知らないが、知ったコトではない。それどころの問題じゃないんだ。
こっそりと扉を開けて、抜き足差し足…
涼子は店内にしまった看板などを客間の隅に片付けていた。
「ご主人は何か勘付いたのかな…」
「どうしてです?」
「えらくぶっきらぼうだった気がする。」
「いつもああです。女房のことも関心がない人ですから、勘付くなんてありえません。」「ほほう…伊藤さんご夫婦も倦怠期か。ご主人に構ってもらえないのは寂しいですな」
「もう諦めてます。」苦笑いしながら涼子はシャッターの鍵を閉めた。背後から所長が涼子の肩に手を掛けた。「さっきは、すごいスリルだった。」
「あんまりです。もし主人に見られたら、追い出されます。」
私は事務机に隠れて見ていた。
「そんなコトを言うが、君も興奮しただろう?」
所長の誘いに涼子は振り向いて抱き付いた。二人は顔を交互に振りながらキスし合った…