「光お嬢様…ランチでございます」
メイドの掛け声で、光は目を開ける。
「…いらないわ。起きたばかりでお腹なんか空いてないもの…後で呼ぶから下がってちょうだい…」
光は億劫そうに口を開いた。
「かしこまりました」
私は高平光。高平グループの跡取り。
私は欲しいモノなどない。今まで欲しい物は金でなんとかしていたからだ。一千万、一億、一兆…ソレくらいの金ならいつでも出せる。…唯一手に入れた事のないモノ…それは…
コンコンッ★
『光』
低い声がドア越しに聞こえる。帰って来たんだ…
「…どうぞ」光はソファから立ち上がり鍵を開けた。
キィ…
ドアの向こうから、懐かしい顔が現れる。
「お父様…帰ってたんですね…2年ぶりだわ」
「…おみやげだ。」
父はそう言うと、ある青年を連れて来た。
「……誰?」
青年は、パーカーというこの家には似合わないとてもラフな格好で、真黒な髪が印象的だった。
「挨拶を、優貴君」
青年は、光に目を向けた。吸い込まれそう…。光は慌てて目を逸らした。
「上野優貴です。よろしく」
優貴は無愛想に挨拶をした。…ウエノユウキ?知らない…誰だろう。
「…コイツはお前の玩具だ。」
!?
「…よくわからないわ。どういう事?玩具って…」
「お前の言う事はなんでも聞く。なんでも従う秀才な玩具だ。コレがお前へのみやげだ」
父は冷たい表情で、冷たいコトバを吐いた。「…話はそれだけ?」
「ああ。またパリに出張があるんだ。じゃあな」
本当に、あれが父親の姿なのか…昔からああだった。本当に…私を愛してる…?
「おい」ハッ!
「…何」
「アンタ何歳?」
玩具とか言われてるくせにタメ口?
「…16よ」
「ふぅん…」優貴は、光の顔に近付く。男経験の無い光は動揺してしまう。
「きゃ…っなっ…何よ!」
「フッ♪アンタ童顔だねぇ。中学生かと思った」