その夜、静夜はずっと傍にいてくれた。
次の日、部屋のドアに鍵をつけ、防犯道具をくれた。
まだ何かして欲しい?不安な所はある?と静夜は優しく聞いてきた。
「──……何もない。もう平気…」
「──……ごめん。ルナ…嫌な目にあわせて」
静夜のせいでは無いのに、静夜はルナに謝り続ける。
「あの人…兄様の…知り合い?仲が良い人?」
「幼馴染み…ずっとこの家で育った」
「そう…」
「……悪い…奴じゃないんだ。…あんな…ひどい事するような…」
「──……」
ルナが悲笑すると、静夜の背に手を回し、抱きつく。
「あの人は哀れな人…私が理想と違って混乱したのね。…分かる…仕方ないわ…娼婦の娘なんて…汚らわしいよね」
「ルナ…どうしたら…分かってくれる?君は…汚くない」
ルナがクスッと笑う。
「兄様が…抱いてくれたら…」
「それは…」
「嘘……抱けないのならその理由を訊きたい。何故…?」
静夜はその質問に身を強張らせ固まる。
「静夜兄様…」
「ッ……話せば…ルナはあきらめる?」
ルナがうなずく。
「──……俺は…妹がいたんだ。…俺はその妹を愛していた。本気で…」
「えっ…」
「妹とは相愛で…それを唯一知っていたのが十希で応援はしなかったけど理解はしてくれていた」
「…」
「汚いだろ?…実の妹を…どうしようも無く愛してしまった。…そのせいで…妹は…消えた」
「消えた?」
「父がね……何か感付いて、妹は強制的に結婚させられ…いなくなった。俺のいない隙に……父は妹がどこに嫁いだのかも教えてくれない。父が闇に隠そうとすれば妹は見付からない。…俺は…もう生涯妹には逢えない」
「今でも……愛してるの?実の…妹さんを…」
「──……分からない。でも…幸せを願ってる」
静夜は無理に笑顔を作り、ルナに向ける。
「こんな…汚れた心を持つ俺はルナを愛する事は出来ない。したくないんだ」
ルナが左右に首を振る。
「……私は…私の母は…弟と躰の関係があったわ。でも母は娼婦だから…私は誰の血が流れてるのか分からない。…静夜が汚いなら…私はもっと汚い。…私達は同じ…」
妹を愛した静夜
誰の血が流れているか分からないルナ
二人は
暗い闇の部分で繋がっていた…