咲子さんの部屋を出て、階段の踊り場の所で、オレは咲子さんの夫、桐生さんに出会った。
細身、スーツが似合い、メガネを掛けたエリートサラリーマンといった印象。
オレは階段をのぼる際に「…こんばんは」と一声掛けた。
桐生さんはメガネを薬指でちょいと上げ、蔑むようにオレを一瞥。
何も言わずに、咲子さんの部屋の方へ向かって歩いて行く。
感じ悪ィ〜…オレはたった今、お前の女房を可愛がってきてやったんだぜ…目を潤ませて、オレのモノをおいしそうにしゃぶっていたんだよ…お前より大きいって喜んでいたぜって、オレは言いたいのをぐっと堪えた。
オレは自分の部屋に入り、暫く、テレビを観るともなしに観ていた。
腹が鳴った…そうだ、結局、オレは咲子さんの手料理を食べずじまいだった。
もう、ラーメンさえも作るのが億劫になり、オレはレトルトご飯を茶漬けにして、胃袋へ流し込んだ。
しかし、咲子さんの体はよかった。
オレの体は、何度も咲子さんを思い出し、気がつけば、オレのモノは膨れ上がるしまつだ。
オレは何気なく、床に耳を当てた。
咲子さんの部屋の何かの音が聞きたかった。耳をそばだてるオレ。
このマンションは立て付け悪いらしく、信じられない音がオレの耳に飛び込んできた。
小さく喘ぐ声。(いや〜ン…)って、聞こえる。
ぼそぼそと男の声…あれは桐生の声だろう。何を言っているのかは判らない。
(お尻…お尻…、穴よ、穴…)
咲子さんが、今、そう言った。
桐生が咲子さんのア〇ルを舐めているのか、入れているのか…いずれにせよ、
咲子さんが感じている事は確かだ。
悔しくてならないオレ。
今日のオレは咲子さんのア〇ルまで、手が回らなかったというか、舌が回らなかった。
咲子さんは、ア〇ル好きだったんだ……悔やまれてならないオレ。
その夜はなかなか寝付けなかった。