────あの頃の私は、誰かと話す事さえも無意味だと思っていた。
けれど、私は一度だけ親に私の思いを打ち明けた事があった。
私は昔から歌をうたう事が好きで、親に『歌手になりたい』と言った事がある。親は私の言葉を聞き驚いたかと思うと、冷たく『はっ……』とあざ笑った。
『成績も下の下、何をしても続かない…そんなお前に何が出来るんだ?寝言は寝て言いなさい…』
一生懸命に築き上げた私の“夢”は親の反対を受けあっけなく散った………。
その後、私は親が勝手に決めた会社に半ば無理矢理に勤めさせられた。
『…私はいったい何がしたいの?私は何の為に生きているの?私は────。』
『───はっ!!』
桜:「やだ…嫌な事を思い出した……。歌手か…そっか…あの日から私、歌う事を避けてたな…」
私は乾いた唇を舌でそっと舐め、ゆっくり口を開くと私の大好きな歌をうたった…『やっぱり歌は好きだ…落ち着く…』
美しく綺麗な歌声が辺りに響く………。
桜は歌い終わると目を閉じ、ゆっくりと眠りについた。
────────。
チュンチュン……
小鳥の囀りと朝日の光の眩しさで私は目を覚ました。
夏の山はとても涼しく清々しかった。
桜:「…ん……なんか…温かい……………………えっ!?」
目が覚めると私の隣に空が居た…空は私の肩を包み込むように抱き寄せてくれている……。
空:「…目が覚めましたか?怪我は痛みませんか?…昨晩はとても探しました…突然走り出すから………。探してる時にとても美しい歌声が聞こえたんです…降りてみたら桜が眠っているじゃないですか…まったく……心配しま…し…っ!?」
ぎゅっ…
私は心配して何処か怒ってくれている空が愛しくて空に抱きついた……。